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太陽待ち

taiyoumachi辻仁成氏の「太陽待ち」を読みました。長編でしたが、まずまずのテンションを保って読むことができました。

”太陽待ち”とは、ドラマや映画の撮影で、晴れ間が出るのをひたすら待つ状態のことをさします。頑固にも自分の理想の太陽が出ないために、何度もダメだしをする老映画監督が登場します。その映画撮影の”汚し屋”と呼ばれる舞台の塗装屋が、一応主人公だと思います。がしかし、昏睡状態で病院に眠る兄の記憶の中に、老監督の過去や広島原爆にかかわる米兵の胸中が出てきます。

老監督は青年期、戦時中に南京で、日本軍が勇ましく活躍している姿をドキュメントで描き、日本人の士気を高める国策映画の製作に携わっていました。中国人であるフェイファンは、母の金儲けのため、日本に女優として提供され、映画の主役になったのですが、中国人が惨殺されているのを見て、自責の念にかられます。監督はフェイファンと恋に落ちるのですが、フェイファンの心変わりに悩み、ついにフェイファンを死に追いやってしまったような状況になりました。それから監督は60年もの間、心閉ざしてしまい、生きている内にフェイファンをモデルとした壮大な映画を作ろうと考えていました。

一方汚し屋の主人公の兄は、新型の麻薬を売りさばこうとしていた時に、頭を銃で撃たれ、植物状態になっていました。兄を追いつめたテンガルハットの男は、兄に預けておいた、何かが入っていたランドセルを血眼になって捜します。その中身は結局何が入っているのか明かされなかったのですが、預かった子供心に、”一瞬にして世界を終わらせるもの”と思わせるものがありました。でも蓋を開けたりしないから、自分は世界を手の中に納めていると考えることができました。

テンガルハットの男の父は、アメリカ兵のパイロットでした。広島原爆投下前に広島を視察に来た時に不時着し、広島の収容所のような病院に入れられていました。そこで自分は原爆投下と同時にこの世から消えてしまうことになり、悟りの境地に至ります。施設の看護師と恋に落ち、何とかその看護師を広島から遠ざけようと努力します。その子供がテンガルハットの男でした。

主人公の兄弟は子供の頃の頭の中で、戦時中の南京や広島、あるいは現代を、時間的空間的にさまよいます。場面があちこちに飛びますが、それが最後には一つに繋がります。中でも広島の抑留兵の1ヶ月間に渡る手記は、よく心理描写ができてると思います。なかなか読みごたえのある長編小説でした。
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